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県や市町村の参加を得てデパート等で開催する合同行政相談所にも行政相談委員は積極的に参加しているが、行政相談委員が開催する行政相談所にも地方自治体に参加していただいて関係機関との連携に努めているところであって、これによって国と地方自治体との双方の苦情を総合的に処理できるようになって、相談活動の上で大きな成果を挙げている。今後とも、地方自治体をはじめ民生委員や人権擁護委員などとなお一層の連携の維持、強化を図っていくことが必要であろうというふうに考えている。

 

平松毅(関西学院大学法学部教授)

 

先程、行政相談委員の方から「市民オンブズマンの活躍によって行政相談委員の街のオンブズマンとしての存在意義、影が薄くなるのではないか」というご質問があったが、これは、情報公開制度が行われることによって、市民であっても行政に関する調査ができることになったことに原因がある。すなわち、オンブズマンの一番強力な権限は強力な調査権にあるのであるが、その調査というものが情報公開制度によって一般市民にもできることになった、マスコミがそれを報道して世論を喚起し、公金の不当支出を住民訴訟で追求することができるようになった、そのために逆に、「行政相談委員の影が薄くなった」というふうに言われるような状況が生じたわけである。

しかし、市民オンブズマンが、そいうオンブズマン的機能を果たすことができるのは、官公庁の会計責任に関わる分野に限られる。行政相談委員の存在意義は、そこにあるのではない。現在、各市町村には多くの相談窓口があるが(例えば大阪府でいうと、30から50くらいの各専門の相談窓口がある)、各課毎に受け付けているので、市民にはどこへ相談に行ったらいいか分からない。現在、民間においても多くの相談窓口(宗教団体などがやっている)があるが、そこでは、相談の約70%が「どこへ相談に行けばいいか」ということの教示である。したがって、そういう教示をすることに十分な存在意義があるわけである。もう一つ、行政相談委員は私人間の紛争をも取り扱うが、これもわが国独自の制度であって、そういった様々な複雑な相談に対してお互いにネットワークを組んで情報を交換し合うような仕組みを設けることが、これからの課題ではないかと思われる。

この機会に、日本にオンブズマン制度を設けないことに何かひけめがあるようなご意見があったので、オンブズマンというものの意義について、ちょっと申し上げてみたいと思う。

欧米におけるオンブズマン制度の採用は、公務員に裁量の余地がないことによって生じた不都合を救済しようとすることに重要な意味があることに注意する必要があると思う。欧米においては、公務員が権限を濫用しないようにするために、法律の規定はできるだけ詳細に定められている。これは、日本の法律とアメリカとかの法律を比較してみると分かるが、欧米の法律においては、まず、詳しい定義規定があり、詳細な規制があり、さらに罰則規定があり、というように非常に詳細である。ところが今日のように社会生活が複雑多岐にわたると、法律の規定を忠実に執行することが事態に即応した合理的解決を妨げることが少なくないようになった。さらに又、法律を操作する能力を有する人とそうでない人との間において顕著な差異が生ずるようになったのである。

このために、公務員は、「何が公益なのか」ではなくて「何が違法なのか」という

 

 

 

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